(出典:新日本プロレス公式)
高橋ヒロムとEVIL。そして内藤哲也。
今回のNJC、ドミニオン、そして7.25愛知大会に及ぶ戦いは、
この3人の複雑な関係の中で争われている。
まず3人の関係性を簡単に説明すると、
このようなモノになるだろうか。
内藤哲也・ヒロム=プロレスを教えた師弟関係
内藤哲也・EVIL=ロスインゴ最初のパレハ
ヒロム・EVIL=ほぼ同時期に入門し、苦労を共にした先輩後輩
つまりヒロムとEVILには若手時代からの約10年に及ぶ関係が、
今回の物語の背景にあるということだ。
そしてそこに内藤哲也が深く関与しているという事実もある。
ヒロムが若手時代、内藤哲也の教えを受けていたことは、
ここ最近の記事などで皆さんも周知のことであると思うが、
その裏で同時期に当時若手であったEVILが、
浜口ジム時代からつながりのあった
内藤哲也に指導を懇願した経緯がある。
しかし当時ヒロムの指導に手いっぱいであった内藤哲也は、
それを断り、EVILは田口隆祐の指導を受けることになった。
それから時が過ぎ、ロスインゴがまだ何物でもなかったと言えるころ、
EVILは最初のパレハとして内藤哲也と行動を共にした。
それからロスインゴとして、そして内藤哲也個人が圧倒的な民意を得る
ところを誰よりも近くで見てきたのは他ならぬEVILである。
そしてEVIL加入から1年後ヒロムは満を持してロスインゴに合流した。
ヒロムの加入は結果的に更なる人気の獲得へとつながり、
その地位は不動のものになったと言えるだろう。
しかしその爆発的な人気と引き換えに、失ったものがあったと言える。
それは本来のアイデンティティである制御不能という部分である。
もともとロスインゴはヒールでもない、ベビーでもないという立ち位置だが、
反体制という立場にあったことは間違いない。
それは時のオーナー批判、そしてそのオーナーが推すオカダを標的にした
ことが何よりの証拠である。
またそれが時代とマッチし、ファンに受け入れらたわけである。
しかし上述したように圧倒的な人気を得たがために、
いつしかロスインゴは知らぬ間に体制側になってきたのかもしれない。
反則や乱入などが全てではないが、やりたいようにやるという風には
ファンから見ると見えなくなってしまった。
それが結果的にEVILの脱退の引き金になったのかもしれない。
そしてヒロムが2018年夏から長期欠場となりファンの前から姿を消した。
ヒロムが欠場の間、EVILはファンが先輩を忘れないために、
髪に赤色を入れ、そして大事な場面ではヒロムの革ジャンを持参するなどし、
その帰りをファンとともに待ちわびていたものである。
しかし2019年年末、ヒロムが実際に復帰をすると、
3人を取り巻く状況が一変してしまった。
内藤哲也が宣言通り史上初2冠王となり、
ヒロムは一気に新時代のジュニアのカリスマへと昇りつめた。
他方EVILは個人として大きな成果を得ることはなく苦しんでいたと言えるだろう。
そして事態はどんどんEVILにとって不本意な方向へと動いていく。
結果的に試合自体は流れることとなったが、
内藤哲也とヒロムの師弟対決というストーリーの始まりである。
ここからは皆様もご存知の事かと思うが、いまだこの対戦を熱望する声は多い。
つまりこの対決は民意に受け入れられたのである。
そしてその影でEVILは苦しんでいたのだろう。
もしかするとこの時点で、ロスインゴにいてはこの二人を超えることはできない。
ましてや戦う場面も限られてしまうと考えたのかもしれない。
そこで内藤哲也やヒロムの前に立つべく、
そしてつまり同門ではなく敵として迎え撃つべく
ロスインゴからの脱退という決断をしたのではないだろうか。
その証がNJCで見せたヒールへと振り切ったEVILの姿である。
そして一気に2冠王者という玉座にも昇りつめた。
内藤哲也から王座を奪い、初防衛戦がヒロムというシュチュエーションは、
まさにディスティーノ、運命というしかないと思う。
これは個人的に感じたことなのだが、
ヒールへと振り切り、バレットクラブに加入した
EVILを見ていると、どこか楽しげであると思う。
それはロスインゴという呪縛、そして内藤哲也という呪縛から
さらにEVILという自身からも解放されたからではないだろうか。
そう思うと長くロスインゴを応援してきた身としては辛いものがあるが、
これも受け入れ消化していくしかないだろう。
今回の戦いを機に、ヒロムとEVILのこれまでの10年間は清算され、
新たなステージへと進んでいくことになると思う。
そしてファンとしての願いは今回は見ることができなかった、
フルメンバーでの大合唱、そしてグータッチという姿を
いつか見ることが出来ればという思いである。
いつかこの3人が本当の意味でつながるということを
信じて今は見守っていこうと思う。